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    ストックリスト
    「よしみのクレーム日記」再開編

    – column –

    ちょっと旧い車に乗りたいという人が怖れる「エンスト」ってやつについて。

    11
    Apr, ’16

    エンストは、エンジンストップではなく、エンジンがストールすること。
    辞書で「STALL」を引くと、「自動車などで、エンジンが急に停止してしまうこと」と記されてあって、まさにその症状のことである。

     

    240の商談のときなんかで、「急に停まったら困るんですが大丈夫ですか」とか「カッコイイから乗りたいんですけど停まらないですか」ということを尋ねられることがある。

     

    お客様から尋ねられて嘘を答えるわけにはいかないので、「もちろん停まることはあります」と正直に伝えるけれど、そのあとに「今の車のようにすべてがコンピュータで複雑に制御されているわけじゃなく、シンプルに造られていて、ポイントも限られているので、その辺りにしっかりと手を入れてさえおけば、かなりそのリスクを減らすことができますよ」と必ず付け加える。

     

    エンストのチェックポイントは、大きくいうと3つ、燃料系と点火系と燃料調整系である。

     

    まず燃料系というのは、燃料(=ガソリン)をエンジンに送るシステム。

     

    車の後方に置かれている燃料タンクからガソリンを汲み上げ、前方のエンジンまで送り出す役割を果たすシステムで、システムを構成する主なパーツは、燃料ポンプ(車種によっては、燃料を汲み上げるインタンクポンプと送り出すメインポンプに分かれるものがある)、燃料フィルター、燃料ポンプリレーの3点。

     

    なかでも、燃料ポンプリレーは、エンスト原因のベスト3に入る弱点で、燃料切れのようなカタチで停まったときは、まずこれが疑われる。

     

    燃料がエンジンに届かなければ、当然エンジンはかからない。

     

    不確かな情報ではあるが、ヨーロッパの電装パーツは公害防止のために鉛の入ったハンダが使用できず、無鉛ハンダで各部を圧着しているために、ボルボに限らず欧州車全般に電装系に弱点があるといわれていて、燃料ポンプだけではなく、各部に使用されているリレーがイタズラをして、われわれを悩ませることは、珍しいことではない。

     

    もちろん燃料ポンプ本体も、モーターの回転で駆動するものだから、寿命は当然あって、走行距離や使用状況にもよるが、10~12年あたりが、ひとつの目安になってくる。
    点火系は、エンジン内で火花を飛ばして、ガソリンと空気の混合気を爆発させる装置。

     

    燃料がエンジンに届いていてもスパークしなければ、当然爆発しない。

     

    構成する主なパーツは、末端からスパークプラグ、プラグコード、ディストリビュータ(キャップ+ローター)で、メンテナンスに携わるわれわれとすれば、どれも消耗品という位置づけで、ブレーキパッドなんかと同じように、定期的な交換が必要(それぞれインターバルは違うが)なパーツだが、調子よく走っているときにはなかなか手を入れにくいパーツでもある。

     

    車種によっては、プラグコードやディストリビュータのないダイレクトイグニションという点火装置があるが、この場合の各シリンダーについているイグニションコイルというパーツもやはり、経年で劣化する消耗品と考えてもいいパーツで、どこかのタイミングで交換が必要になる。
    そして燃料調整系は、ガソリンと空気の割合、つまり混合気の濃度を調整するシステムで、昔はキャブレターという装置でやっていたことを、たとえば240なら89年以降ECU(Engine Control Unit)というコンピュータが制御するようになっていて、システムの構成要素が多岐にわたるので、エンスト要因の中ではいちばん厄介だ。

     

    つまり、燃料がエンジンに届いて、きちんと火花が飛んでいても、混合気の濃度が適正でなければ、キレイに爆発しない(あるいはまったく爆発しない)ということで、問題はその「適正」を判断する要素がたくさんあるということだ。

     

    たとえば、外気温の高低、つまり暑い寒いというのは、混合気の濃度調整のために必要な情報のひとつで、暑いときには薄めの、寒いときには濃い目の混合気が必要になる。

     

    じゃあ、コンピュータが何でその気候の寒暖を感じ取っているかというと、エンジンの冷却水の温度で、水温センサーというパーツがその役割を果たしている。
    この水温センサーがボケて、冬なのに暑いと感じてしまうと混合気が薄すぎて爆発できないし、夏なのに寒いと感じてしまうと、混合気が濃すぎて、スパークプラグが湿ってしまい、いわゆる「かぶった」状態になって点火しない。

     

    他にも、最初に火がつく1番シリンダーのピストンの位置を知らせる(ピストンが下がっていればより多くの燃料がいるし、下がっていればあまりいらない)おなじみの「クランク角(RPM)センサー」や、吸入する空気の量や温度を測ってコンピュータに知らせる「エアマスセンサー」、アクセルペダルの開度を知らせる「スロットルポジションセンサー」など、20以上のセンサーが張り巡らされていて、それらの情報すべてをECUが演算解析し、適切な燃料濃度を燃料噴射装置に知らせている。

     

    240や940についている「λ(ラムダ)」は、この燃料調整システムに異常がおこったときの警告灯で、その不具合の内容はコンピュータに記憶されているので、ほとんどの場合テスターをあててその情報を引き出してやれば原因はつかめるが、なかには、バキュームホースが経年劣化で破れていてそこから空気を吸い込んでいたなんていう、コンピュータの関知しない原因があったりもするから、メカニックが四苦八苦することも多いのだ。
    まあ、これだけ解明できているわけだから、それほど不安にかられることはないですよ、というのがこの「エンスト」問題の結論だけれど、前にも書いたように、

     

    われわれがプロとしてお客様に関われるのは、たとえばエンジンがしっかりとその機能を果たせるかどうかというような、いわば「物理」の中でのことで、答えのはっきりした世界だが、「安心感」や「不安」というのは、心の持ち方で、実体のない心理的なものだから、「物理=メカニズム」の問題が解決したからといって、それが「不安」打ち消すことや「安心感」をもつことに繋がるとは限らない。もちろん「物理」で、その不安を最小限にすることはできるが、最後のところは気持で乗り越えてもらうしかない。

     

    というのもまた、真実ではあるわけで。

     

    昨日の商談でも話が出たし、今も一台その症状で預かっている車があるけれど、いろいろと難しい。

     

    再録20110624

     

     

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    ちょっとしたリフレッシュ。

    08
    Dec, ’15

    yoshimi20151208_2

     

    朝いちばんで展示場にある車の並べ替えをしました。

     

    思うような仕入れがかなわず、展示車の台数が淋しくなってしまったこともあるんですが、いつも同じものが同じところに並んでいるショップは、それだけであまり入る気がしないように思うので、やはりこれはショップのひとつのルーティンワークじゃないかと考えています。

     

    どんな商品でもそうだと思うんですが、いつも売れていれば、売り場(展示場)は常に活性化しているし、その雰囲気がお客様にも伝わり、相乗効果となってさらに活性化、といういい循環になるわけですが、問題はそうではないときの対処。

     

    モノの動きが鈍いときは、まず売り手側のわれわれの心が鈍くなっているということも多いので、なにかしらやってみることまずそれを振り払うことが大切だと思っています。

     

    もちろん車そのものを入れ替えることができればそれに越したことはないのですが、いつもいつもそういうわけにもいかないので、展示車をあれこれ移動させることで、「見た目」をリフレッシュするわけです。

     

    見た目を変えるだけというのはギミックのように思われるかもしれませんが、商品のディスプレイというのは不思議なもので、場所を入れ替えることで、それまで死んだように眠っていた車が突然目を覚まし、あっという間に買い手が付いたりすることもあるし、どうも車にとっても居心地のよい場所があるようで、動かしてみて妙に納まりのいい車もあったりするんですよね。

     

    あれとあれをこちらに移動させて、空いたところにこの車、あの車をいったんバックヤードに下げて、これをあそこに置いたら、その車をここに。

     

    店頭に展示しているボルボたちを、車種や色のバランスを考えながら、パズルのように組み合わせる作業、しかもお預かりしている車があふれているようなタイミングなので、けっこう手間のかかることなんですが、ぜんぜん違う位置に移動したボルボたちをみると、毎日眺めているわれわれ自身もなんとなく新鮮な気分になるし、同じ所でじっとしていた車も、配置が変わってなんとなくうれしそうな顔をしてるような気がするから不思議。

     

    すっかり景色の変わった展示場を、道の向こうから眺めて、ちょっといい気分。

    これで目を覚ましてくれる車がいてくれたら最高なんですけどね。

     

     

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    デモカーというひとつの実験、あるいはメッセージ。

    21
    Sep, ’15

    demo

    吉見自動車にはボルボ240の「デモカー」があります。

     

    商品車でも代車でもなく、文字通りボルボ240という車のデモンストレーションをする車で、レンタカー登録をした「わ」ナンバーの240ワゴン(1990)です。

     

    240というモデルは、最新の型でも新車から22年目という車なので確かに旧いことは旧いんですが、ボルボは「丈夫で長持ち」というのが売り物のメーカーだし、240という車もとてもシンプルにできているので、ふつうに手入れさえしていれば(ホームドクターがいるというのが条件になるかもしれませんが)、ふつうに乗れるふつうの車だとわいうのがわれわれの確信です。

     

    ただ販売しているわれわれがそれを言うとどうしてもセールストークとしてとられられてしまうということがジレンマで、それを「トーク」ではなく、実際に使って感じていただこうということで造ったのがこのデモカー”re-birth240″なんです。

     

    240に乗ってみたいけれど、何もすき好んでそんなリスクのある旧い車に乗らなくてもいいんじゃないかとか、どこかで立ち往生したらどうするのよ、あるいはメンテナンスにお金かかるんじゃないの、といった不安をお持ちの方に乗っていただいて、ぜひそういう不安を解消していただけたらと考えて、われわれのこれまでの知識と経験をフルに活かして、日常の足として使っていただけるレベルに仕上げてあります。

     

    この車には、こんなストーリーがあります。
    http://volvostyle.exblog.jp/14619410/

     

    これが2012年2月の記事ですから、もう3年以上になりますね。
    もちろん、このデモカーで試して240を買っていただいた方も、決してたくさんとは言えませんが、けっこういらっしゃいます。

     

    貸し出しにあたってのルールは、下記の申し合わせを遵守していただくこと。

     

    [ 試乗車貸し出しに関する申し合わせ ]

     

    □ 貸し出し期間は最長1週間とします。
    □ 運転者の住所・氏名のご記入と、運転免許証の写しの提出をお願いいたします
    □ ご試乗後の、試乗レポート(感想)の提出をお願いいたします。
    □ 貸し出し中の交通事故・交通違反に関しては、契約者が一切の責任を負うこととします。
    □ 試乗車は、任意保険(対人無制限・対物無制限・人身傷害3000万円)に加入しておりますが、事故等でこの保険の適用を希望される場合は、免責金として一事故あたり5万円をいただきます。
    □ 試乗車は、車両保険には加入しておりませんので、自損事故・交通事故による当車両の破損・損害に関しては、契約者が一切の責任を負うこととします。
    □ 試乗車が正常な使用状態で万一故障した場合は、当社において責任を持って修理することとします。但し、当社までの搬送は契約者の責とし、自動車を使用できなかったことによる損害(電話代、けん引代、レンタカー代、作業補償、商機免失の補償等)や.弊社指定サービス工場以外での修理の費用は負担いたしません。
    □ 試乗車は、ガソリンをフルタンクでお渡ししますので、返却時も同様にフルタンクでお返しください。

     

    代金はご不要、唯一の義務は試乗レポート(感想)を書いていただくことだけです。

     

    真剣に240に乗ることを考えていらっしゃる方に、ぜひご利用いただきたいと思っています。

     

    お申し込み・お問い合わせは
    wagon<at>yoshimi-auto.com もしくは 0120-055-443 まで。

     

    いい車ですよ、240。

     

     

     

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    陳腐化というマーケティング。

    27
    Aug, ’15

    prius

     

    何年か前にプリウスという車に乗ったことがあります。

     

    もちろん購入したわけではなく旅先でのレンタカーだったんですが、日ごろ憎まれ口ばかり叩いておきながら、一回も乗ったことがなかった車だったので、ものは試しということで、一日乗ってみたわけです。

     

    今はもう猫も杓子もとばかりにハイブリッド全盛で、廉価版のアクアという車がいちばん売れているらしいですが、石を投げればプリウスにあたるというくらいの頃(ほんの数年前なんですけどね)でした。

     

    そのプリウスは、最新の型ではなく、2006年の2代目モデルで、走行もレンタカーとしては珍しく6万kmを超えている車だったんですが、走る止まる曲がるに関しては予想どおりまったくなんの問題もなく(アイドリングでまったく音がしないのが不気味だったですが)、かなり快適だったことを憶えています。

     

    ただ、操作系のインターフェイスがすべてデジタル表示になっていて、車を運転しているというよりも、ゲームセンターで遊んでいるような感覚に陥ってしまい、そんなふうに意識し始めると、いかにも軽やかな操作感や、なんのストレスも、そしてほとんど音もなく回転のあがるエンジンも、なんか自動車としてのリアリティが薄い。確かに燃費は一日走っても燃料ゲージがひと目盛も下がらなかったくらいなので、効率に関してはまったく文句はないんですが、なんとなく操作するのではなく操作させられているといった感じ。

     

    たしかに良くできた機械といえるのかもしれないけれど、じゃあこれがいい車かといわれると、けっして積極的にYESとは答えにくい。まず自分でお金を払ってこの車を買うということは、あり得ないなあというのがそのときの正直な印象です。

     

    自動車という道具になにを求めるかというのは、100人いればおそらく100通りの答えがあるような質問なんですが、個人的には、少なくとも愛着をもてるような雰囲気をもっているもの、もっといえば官能性の気配を感じるものじゃないと面白くないなあと思ってしまうわけです。

     

    もちろん車にそんなことを求めないよという人にすれば、それでいいのかもしれないですが、愛着の持てない道具にお金を使うのはやはり楽しくないですよね。

     

    あと、これだけは絶対受け入れられないなあと思うのは、抜群の技術力(もちろん耐久性に対しても)をもちながら、今のモデルを古くさく見せるために次々と必然性のないモデルチェンジを繰り返して(プリウスはまだ長いほうだけれど)、旧いモデルを使い捨てにする陳腐化というマーケティングの姿勢です。

     

    最近では欧州車もだんだんモデルチェンジのサイクルが短くなってきているような気もしますが、なんとなく売るためにすぐデザインを変えるメーカーって信用が置けない気がするんですよね。

     

    まあ良くも悪くも、今の日本を象徴する車には違いないんですが。

     

     

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