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    「よしみのクレーム日記」再開編

    この時季の、いつものこと。

    07
    Jun, ’15

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    これが地球温暖化というものなのかどうかはよくわからないけれど、春と秋といういちばん過ごしやすい季節が年々短くなってきているような気がしてしかたがない。

     

    今年も5月の後半からすでにいきなり真夏日という日が続き、それに伴ってエアコン関連の入庫が増えてきた。

     

    旧い輸入車を販売しているわれわれのようなショップにとっては、毎年の恒例行事のようなもので、「真夏日」という言葉を聞くようになると、ガスの補充から点検、そして修理と、毎日のようになにかしらエアコンに関するの相談が増えてきて、電装系の仕事を任せているS電気との打ち合わせや車の行き来も多くなってくる。

     

    いつもの時季の、いつものこと、である。

     

    それにしても、このエアコンに関してはどうも誤解が多いように思う。
    代表的なものが、輸入車はエアコンが弱いという定説で、車の商談のときもエアコンは大丈夫ですかと尋ねられることも多いけれど、そんなことないけどなあ、というのがわれわれの正直な実感である。

     

    たしかに日本の夏の高温多湿はヨーロッパと比べるとはるかに過酷なので、日本の車のように寒いほど冷えるというような爆発力は欧州車にはないけれど、たとえば240のような旧い車でも、きちんと手の入ったエアコンであれば(日本製のコンプレッサーだしね)、決して効かないとは思わない、というか充分冷える。

     

    ただ、どんな機器でもそうだけど、長く使い続けるためにはメンテナンスは必要だ。

    効かないエアコンのほとんどは、整備不足なのだ。

     

    固定された状態で使用される家庭用のエアコンでさえ、10年も経てばそろそろ買い換えかという話がでることもあるくらいだが、自動車用のエアコンの場合、その使用状況はそれよりもはるかに過酷で、コンプレッサーをはじめとする主要パーツがエンジンの高熱のこもるボンネットの中に閉じ込められていることや機器類がスペースの節約のためにかなり小型化されていることなんかを考えると、最新モデルでも20年超という240は言うに及ばず、最終モデルが1997年の940や850、そしてV70も初代の875がすでに15年、2代目の285でさえ初期モデルはすでに10年が経過しているわけだから、もしこれまでに一度も手をいれずに働いているとしたら、それはかなり上出来というべきだろう。

     

    そういう意味では、エアコンに限らずそういう部品(補機と呼ばれるエンジンやミッション以外の耐久消耗的な機器類)のメンテナンスは、気に入った旧い車を乗り続けることのコストといえるものだが、ただやっぱりエアコンの場合、システムを構成するそれぞれのパーツが高価であるということが問題だと思う。

     

    大物パーツが4つある。
    家庭用でいうと室外機にあたるコンプレッサーとコンデンサー、室内機にあたるエバポレーターと、冷たい風を送り出すブロアファンというパーツがそれ。

     

    最近はOEMで価格の低いものがけっこう出回っているので、部品は以前と比べるとかなり安くはなったし、同じモデルでの経験を重ねることで手が馴れて作業時間もずいぶん短くはなっているが、それでもひととおり交換するとなるとかなり手痛い出費になってしまう。

     

    微弱なガス漏れであれば、毎年この時期にガスチャージをしてまた来年、なんていう「治さない」メンテナンスもあって、そういうやりかたでゆるやかに乗り続けている方もけっこういらっしゃるが、いずれにしても劣化というのは年々進んでいくものだから、その蜜月がいつまで続けられるかは、われわれにもわからない。

     

    エアコンの相談が入るたびに、この金額的に負担の大きいこのリスクを回避するための決定的な方策がなにかあったらいいなあといつも思うけれど、人間の身体と同じで、年をとること、そしてそれにともなう劣化や消耗という自然現象に対抗する手立てはなく、今のところ、そういうことも含めて旧い車に乗るというということを考えてください、とお願いするしかない。

     

    ちょっと口惜しいけど、こうやってリスクをリスクとしてまっすぐに伝えること、そしてそのリスクを上回る魅力をもった車を見つけるということしかないんですよね、われわれには。

     

    P.S.
    240のエアコンの「効かない」伝説や誤解、あるいはそれを「効くようにする」ための方法に関しては、またいつか。

     

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