08月07日 ボルボ240や940など ― 突然の電話
お客様からの電話は、緊張するという話です。
以前にもこのコラムで書いたことがあるんですが、私たちの車屋の仕事は、お買い上げいただいた車や、修理や整備をさせていただいた車を納めた後に、お客様から連絡をいただくのは、たいてい何かしらその車に不具合がある場合というのが普通です。
時には、「ありがとうございました、絶好調です。」なんていうお知らせをいただくこともあり、それはそれでたいへんうれしいものなんですが、基本的には、「便りのないのは良い知らせ」ということになっています。
ですから、ショップの電話や、それぞれの携帯電話に、納車後のお客様から電話が入ると、何か不手際でもあったのではないかと、かなり緊張しながら受話器を握ります。
そんな「緊張電話」のいくつかをご紹介したいと思います。
□ 1993 ボルボ240GLEワゴンにお乗りのNさん。
Nさんは、この240を3年落ちで正規ディーラーから購入され、10年近く乗ってこられました。
その間ずっと整備はディーラーで施されていたのですが、240を知っている人が少なくなってしまったということに不安を感じるということで、当社にお車をお持ちいただきました。
症状はアイドリングの不安定。
この症状は、240ではよくある不具合なんですが、原因の要素が多岐にわたるため、なかなか一発で完治させるのが難しい修理です。
点検の結果とりあえず、ブレーキのマスターバックと水温センサーに不具合が発見され、交換して一旦は納車したのですが、もうひとつしっくりこないということで、最入庫になり、さらに点火系のプラグコード類を交換して納車しました。
Nさんから電話があったのは、その2回目の納車直後です。
N:「車は調子いいです。どうも直ったみたいですね。ありがとうございました。」
Nさんには、完治したかどうか100%の自信はありませんから、乗っててみて具合悪ければお電話くださいね、といって納車していましたので、電話が鳴ったときは、かなりドキッとしたのですが、めったにない「調子いいよ」電話だったのでホッとしました。
この話には後日談があります。
2回目の納車のときに、当社の展示場にあるシトロエン・エグザンティア・ブレークをご覧になったNさん、ルージュ・エルメスというスペシャルカラーのその車をいたく気に入られて、次の週末に試乗をしましょうということになり、最終的にその車に乗り換えられることになってしまったのです。
いわゆる一目惚れっていうやつでしょうか。
結局この240は当社でお引き取することになりました。
□ 1997 ボルボ940クラシックエステートをお買い上げいただいたTさん。
Tさんの940クラシックは、「オーダー」で探させていただいたものです。
状態の良い、赤の940クラシックということで、けっこう時間はかかってしまったのですが、
幸いほんとうにいい車を見つけることができ、Tさんにも満足いただいているようです。
そんなTさんから電話が入りました。
電話をいただく何日か前に、保証期間最後の点検ということで、サンルーフのウェザーストリップ(パッキン)を交換して納車したばかりでした。 サンルーフからの微少な水漏れがあったのです。
一瞬再び水漏れかと、緊張したんですが、そうではありませんでした。
T:「車のほうは調子いいんですけど、シートヒーターのスイッチって、ランプがついているときは、入っているんですか、それとも逆ですか?」
Y:「ランプが点いているときはONですよ。」
T:「そうですよね。 わかりました。」
いつもこんな電話だったらいいんですが・・・。
□ 1989 ボルボ240セダンにお乗りのKさん
Kさんは長い間当社のお客様です。
クラウンワゴン→VWパサートバリアントと乗り継いでこられ、現在は240セダンに乗っていただいています。
その240の燃料調整系の調子が悪くなり、お預かりして修理させていただきました。
閉店間際に納車をして、電話があったのは8時半ごろでした。
K:「Kやけど、車がまた止まったよ。」
ガ、ガーン!!
原因がなかなかわからなくて長い間お預かりしていた車ですから、納車直後にまた止まってしまうなんていうことは、不手際この上ないことですし、しかも知り合いの方と食事に行かれる途中で止まってしまったということですから、Kさんには平謝りで、とにかくJAFで運んでいただくことにしました。
30分後にKさんから再び電話です。
K:「JAFに見てもらったら、ガス欠やったみたい。お騒がせしてすみません。」
Y:「・・・・・。 あぁそうですか、異常じゃなくて良かったですねえ・・・。」
ホントに。
まあたまにはこんなこともあります。
□1996 ボルボ960 3.0 にお乗りのKさん。
年月にこの960を購入いただいたKさん、彼はメカニックの経験もあって、車をさわれる人ですから、自分なりに愛車をモディファイされ、楽しんでおられます。
そんなKさんからお電話をいただいたのは、3ヶ月ほど前のことでした。
K:「電動ファンからなんか変な音でてるんですけど、ベアリングですかねえ」
Y:「たぶんそうでしょう。 かすかな音ということですから、とりあえず様子を見ましょうか。 もしダメなようなら、ピッタリ合うかどうかわかりませんが、中古もあると思いますから・・・。念のために新品の値段も調べておきます。」
ということで、そのときは終わったんですが、結局3ヵ月後にやはりファンが動かなくなってしまいました。
最終的に中古ではなく(信頼性に欠けるので)、新品で交換ということになり、パーツを取り寄せてお渡ししたんですが、突然の電話があったのは、その部品をお渡しした翌日の晩でした。
K:「電動ファンはつけたけど、ファンが回ってくれないんです・・・。」
Y:「えっ?! カプラーちゃんと繋いでます?」
K:「もちろんちゃんと繋いでますが、ダメなようです。」
Y:「ヒューズは?」
K:「あぁヒューズね。そうかもしれないですね。チェックしてみます。」
結果的にはこのヒューズでした。 電動ファンが固まってしまったため過電流が流れそのヒューズが切れてしまったようです。 その辺では売っていないちょっと特殊な50Aのヒューズでしたので、お取り寄せして郵送で遅らせていただきました。
単純に壊れたパーツを交換しただけでは直らない、という実例です。
□ 1994 ボルボ850GLTにお乗りのOさん
Oさんの850は当社で販売した車ではありませんが、インターネットで当社のことをお知りになったということで、連絡をいただきました。
ミッションの不調で車が動かない、ということです。
レッカーでお引取りして、点検してみると、やはりATミッションがダメで、正規ディーラーで供給しているリビルト品(オーバーホール済の製品です)と交換させていただきました。
ATミッションは、ある意味ブラックボックスのようなパーツですから、症状だけでは原因ははっきりとはわかりませんし、走行距離が9万kmあまりですから、ちょっと早いかなあという気がしないではありませんが、いずれにせよ重修理ということに変わりはありません。
そのミッションの交換をおえて、納車した直後にOさんから電話がありました。
O:「ミッションはおかげさまで絶好調なんですけど、エアコンのAUTOが効かなくなっています。車を預ける前は問題なかったはずなんですが・・・」
修理や整備でお預かりした車の状態が、入庫時の状態から変化しているということが、時たま起こります。
基本的にはあってはならないことなんですが、修理の過程でいろいろな部位にタッチしていきますから、私たちの立場からいうと、どうしても避けがたいことでもあります。
いわゆる「修理のリスク」というものです。
交換する部品を外すときに、別のところのカプラーを外してしまう、部品のつけ忘れ、作業中に旧くなったコードが切れる、硬化してしまったプラスティックパーツの破損、等々、年式の経った車を取り扱うときには必ずこのリスクが付きまといます。 また、ちょうど納車したタイミングで、潜んでいた不具合が突然発生するということも、起こり得ます。
このOさんの場合も、修理したのはATミッションですから、エアコンはまったくノータッチなんですが、年式的なことを考えると、各部に経年的な消耗がきているはずですから、何かの拍子に別の不具合が発生したという可能性も否めません。
いずれにせよ、こういう場合は、その不具合をチェックして、キチンとお客様に説明していくしかありません。
Y:「わかりました。 点検させていただきますので、お手数ですがお時間があるときにお車をもう一度預からせてください。 今回の修理に関連していることでしたら、クレーム処理させていただきたいと思いますので、確認させてください。」
少し時間が経って入庫されたOさんの850にテスターを当てて診断してみると、ブロアモーターとレジスターの不具合がレポートされました。 おそらく風量がAUTOポジションにあったために、急激に最大量でブロアファンが回り始め、消耗が進んでいたブロアモーターが傷んでしまったのではないか、という診断です。
その旨をOさんに説明し、ミッションの修理とは直接あるいは間接的にも関連のない不具合ですから、残念ながらクレームとして処理することができない、ということをお伝えしました。
ユーザーの方とすれば、納得できないところもあるかもしれませんが、車というものが機械である以上、何らかの不具合は避けがたいものですし、その不具合が発生するタイミングは予想がつかない、というところに難しさがあります。
私たちとしても、できればクレームとして処理させていただければと考えていたのですが、結果的には不本意な対応にならざるを得ませんでした。
「修理のリスク」ということに関しては、また別のところで考えてみようと思っています。
□ 1992 ボルボ240GLワゴンをお買い上げいただいたDさん。
Dさんは、石川県小松市にお住まいの方で、いわゆる「遠隔地」のお客様です。
850から240にお乗換えになったDさんには、納車時にわざわざ小松から来ていただきましたので、納車3日後にこちらから電話しました。
Y:「先日はお疲れ様でした。無事帰れましたか? 240はいかがですか?」
D:「快調でした。 思っていたよりよく走りますし、エアコンもよく効いています。 ただ、オーバードライブの矢印がついたり消えたりするのと、家に帰って下に潜ってみたら、マフラーのエンドパイプの付け根のところに穴が開いているようです。」
Dさんには保証付でこの240を買っていただいています。
以前このクレーム日記32 でとりあげた「遠隔地への保証」ということに関して決定的な解決策はまだ見つかっていないのですが、Dさんと話し合って、できるところからとりあえずやってみましょう、ということになっていました。
具体的には、
1 地元のディーラーで、診断・修理をしてもらい、支払いを吉見から行う。
(この場合、お客様・当社・地元ディーラーの話し合いが必要なことはいうまでもありません)
2 部品の供給を吉見が行い、取付・交換は地元の車屋さんもしくはご自身でやっていただく。
(この場合交換工賃は、規定の修理時間により当社から支払うことになります)
3 当社に入庫していただき、全面的に当社の手で修理する。
といった方法が考えられます。
Dさんの場合には、電話で話し合いをして、内容的におそらくODリレーの交換とテールパイプの交換ということだろうということで、地元のボルボディーラーで見積りしていただき、それを当社で検討するということにしました。
結果、ディーラーからの見積がリーズナブルなものでしたので、1の方法で解決しました。
手探りのまま進めている「遠隔地の保証」ですから、遠方の方から電話がかかると実にスリリングな気持ちになりますが、そのひとつひとつが、新しいデータになっていくわけですから、今後の私たちにとっては重要な仕事のひとつではないかと感じています。
最近の電話は、発信元が表示されるようになっています。
もちろんそのことによって便利になった点もあるのですが、その電話に納車直後のお客様の名前が表示されたりすると、正直かなり緊張します。
ただ、プロが仕事でとしてお金をいただいてやっていることですから、ビビッているだけではどうしようもないんで、何事もできるだけポジティブに捉えることが大切なことではないかと考えています。
クレームに関しては、「とにかく逃げない」、そのことを肝に命じていきたいと思っています。